﨟長ろうた)” の例文
小学校へ通う大川の橋一つ越えた町の中に、古道具屋が一軒、店に大形の女雛めびなばかりが一体あった。﨟長ろうたけた美しさは註するに及ぶまい。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ものいわぬ高峰たかねの花なれば、手折るべくもあらざれど、被の雲を押分けて月の面影洩出もれいでなば、﨟長ろうたけたらんといと床し。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あわれ、茄子なす、二ツ、その前歯に、鉄漿かねを含ませたらばとばかり、たとえんかたなく﨟長ろうたけて、初々しく且つなまめかしい、唇を一目見るより、と外套の襟を落した。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と直ぐ続けて、肩越に﨟長ろうたけた、すずしい目の横顔で差覗さしのぞくようにしながら、人も世も二人のほかにないものか。誰にも心置かぬさまに、耳許みみもとにその雪の素顔の口紅。この時この景、天女あり。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美女たおやめが手を取ると、取られて膝をずらして縋着すがりついて、その帯のあたりにおもてを上げたのを、月を浴びて﨟長ろうたけた、優しい顔でじっと見て、少しほおを傾けると、髪がそちらへはらはらとなるのを
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴女のおもてすごきばかり白く﨟長ろうたけたり。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と云って、﨟長ろうたけるまで莞爾にっこりした。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)