黒烟くろけぶり)” の例文
乗客はいづれもらちの中へと急いだ。さかん黒烟くろけぶりを揚げて直江津の方角から上つて来た列車は豊野停車場ステーションの前で停つた。高柳は逸早いちはや群集ひとごみの中を擦抜すりぬけて、一室のを開けて入る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
不図又文三の言葉じりから燃出して以前にも立優たちまさる火勢、黒烟くろけぶり焔々えんえんと顔にみなぎるところを見てはとても鎮火しそうも無かッたのも、文三がすみませぬの水を斟尽くみつくしてそそぎかけたので次第々々に下火になって
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
時をおき、揺り轟かし、黒烟くろけぶりたたきつけつつ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
見れば直江津の方角から、長い列車が黒烟くろけぶりを揚げて進んで来た。顔も衣服きもの垢染あかじみ汚れた駅夫の群は忙しさうに駈けて歩く。やがて駅長もあらはれた。汽車はもう人々の前に停つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
黒烟くろけぶりふかはざま
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)