黒枠くろわく)” の例文
東京の大新聞二三種に黒枠くろわく二十行ばかりの大きな広告が出て門人高山文輔、親戚しんせき細川繁、友人野上子爵等の名がずらり並んだ。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
梁川君が死ぬ、其様そんな事はあまり彼の考には入って居なかった。一枚の黒枠くろわくのはがきは警策の如く彼が頭上に落ちた。「死ぬぞ」と其はがきは彼の耳もとに叫んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして黒枠くろわくのついた大きな封筒を彼に渡した。裏にはケリッヒ家の紋章が印刻してあった。クリストフはそれを開いて、震えながら読んだ——まさしく次のとおりに。
不思議な事に私の寝ている間には、黒枠くろわくの通知がほとんど来ない。去年の秋にも病気がなおったあとで、三四人の葬儀に列したのである。その三四人の中に社の佐藤君も這入はいっていた。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「好いのさ。悪けりゃもううに黒枠くろわくが来ていらあ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そして太い黒枠くろわくの眼鏡をかけていた。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私の立居たちいが自由になると、黒枠くろわくのついた摺物すりものが、時々私の机の上に載せられる。私は運命を苦笑する人のごとく、絹帽シルクハットなどをかぶって、葬式の供に立つ、くるまって斎場さいじょうけつける。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
裏をかえすと黒枠くろわく。誰かと思えば、綱島梁川君のであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)