鳰鳥におどり)” の例文
この物語の女主人公、鳰鳥におどりはその後どうしたろう? 木曽義明の運命はいかに? 久方振りで物語は木曽の天地へ帰らなければならない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
尾濃びのうの兵に、徳川家康の三河武士八千を加えて、およそ十万と称する軍勢が、鳰鳥におどりなぎさに遊ぶうららかな晩春四月の湖畔数里にわたって、雲霞うんかのごとく集まった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
北原白秋氏の歌に「鳰鳥におどりの葛飾小野の夕霞桃いろふかし春もいぬらむ」というのがあった。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
「しなが鳥」は猪名いなにつづく枕詞で、しなが鳥即ち鳰鳥におどりが、居並いならぶのとが同音であるから、猪名の枕詞になった。猪名野は摂津、今の豊能川辺両郡にわたった、猪名川流域の平野である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
鳰鳥におどりの葛飾早稲わせにえすとも、そのかなしきを、に立てめやも
最古日本の女性生活の根柢 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
酒宴の席を取り持つのは洞院左膳と鳰鳥におどりとで執事の筆頭甚五衛門は、あの夜以来ご勘気をこうむって自家いえこもっているのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大切な手紙を取りおとしては、お師匠ししょうさまから、どんなおしかりをうけるか知れないと、かれはあわててわしをおろした。そこはうつくしい鳰鳥におどりの浮いている琵琶湖びわこのほとり、膳所ぜぜの松原のかげであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これはこれは鳰鳥におどり女菩薩様、我が家にとっての福の神、ようこそ出現おでましなされた。何かご托宣たくせんでもござるそうな……」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)