りん)” の例文
すなわちもし諸君が許さるるならば、私はマルクス伝の一りんを示すがために、ここにマルクスの細君の手紙の一節を抄訳しようと思う。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
六々三十六りんを丁寧に描きたるりゅうの、滑稽こっけいに落つるが事実ならば、赤裸々せきららの肉を浄洒々じょうしゃしゃに眺めぬうちに神往の余韻よいんはある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まないたの上へ載せられても、三十六りんビクともせぬという、人間で言えば男の中の男、それが苦しがって器量いっぱいもがき苦しむのですから、そりゃ見ていても凄くなります
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
津藤つとう即ち摂津国屋つのくにや藤次郎とうじろうは、名はりん、字は冷和れいわ香以こうい鯉角りかく梅阿弥ばいあみ等と号した。その豪遊をほしいままにして家産を蕩尽とうじんしたのは、世の知る所である。文政五年うまれで、当時四十歳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)