駆落かけおち)” の例文
旧字:驅落
もし駆落かけおちが自滅の第一着なら、この境界きょうがいは自滅の——第何着か知らないが、とにかく終局地を去る事遠からざる停車場ステーションである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時には自分で腑甲斐ふがい無いと思えば思うほど「ええ、何もかもおしまいだ、姫と駆落かけおちでもしてしまおう」
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
最初のうちは駆落かけおち流行はやるとばかり思い込み、娘を失った親や、若い女房に逃げられた夫は、内々心当りを捜しておりましたが、何の手掛りもないばかりでなく、不思議なことに
一体どこの連隊に属しているとも分りもしない或る騎兵の二等大尉と駆落かけおちをして、父親が軍人という奴はみんな博奕ばくちうちで道楽者だという不思議な偏見から士官嫌いなことを知っていたので
と続いた、てんぼう蟹は、夥間なかまの穴の上を冷飯草履ひやめしぞうり、両足をしゃちこばらせて、舞鶴の紋の白い、萌黄もえぎの、これも大包おおづつみ。夜具を入れたのを引背負ひっしょったは、民が塗炭とたんくるしんだ、戦国時代の駆落かけおちめく。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へえ、一軒別に家さがし……なんです、泥棒ですか、駆落かけおちですか」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(一三)駆落かけおちの落書
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
煩悶はんもんも坊ちゃんとしての煩悶であったのは勿論もちろんだが、煩悶のきょく試みたこの駆落かけおちも、やっぱり坊ちゃんとしての駆落であった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……山中さんちゆうを、たれ喧嘩けんくわして、何処どこから駆落かけおちしてやう? ……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これが駆落かけおちでなくって、遠足なら、よほど前から、何とか文句をならべるんだが、根が自殺の仕損しそこないから起った自滅の第一着なんだから、苦しくっても、つらくっても
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)