駆使くし)” の例文
その婦人は三十何年間日本にいて、平安朝文学に関する造詣ぞうけい深く、平生日本人に対しては自由に雅語がご駆使くしして応対したということである。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
いわば陰性のいくさだ。華々しくない。勇ましくない。——それと甲賀侍や伊賀侍を部下として駆使くしするのは甚だつかいにくい。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり、思想と、感情と、文字が、節調を作るのではなく、節調が、思想と、感情と、文字とを駆使くしするのですから、まさに詩歌の革命です。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
清盛きよもり頼朝よりとも太閤たいこう家康いえやす、ナポレオンが生まれなければ、他の英雄が生まれて天下を統一するであろう、非凡の才あるものが凡人を駆使くしするのは
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
この人の大胆な革新態度と、強烈な個性は、その比類のない管弦楽法の手腕を駆使くししてとにもかくにも前例のない驚くべき作品を完成させている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
何よりもまず、余が依存いぞんいたすことは、老師の手腕と、この某国大使館における始末機関の偉力いりょくとですぞ。昨夜は失敗しましたが、今日は十分に駆使くしして、金博士を
神話を高唱し、駆使くしし、その心理的効果を利用するには、冷徹な知性と打算がなければならぬけれども、知性や打算だけでは、大衆を魅了みりょうして行動に駆り立てることはできない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
文章に不馴ふなれな私は、文章を駆使くしするのでなくて文章に駆使されて、つい余計よけいなことを書いてしまったり、必要なことが書けなかったりして、折角の事実が、世のつまらない小説よりも
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
築城は、建設です。やはり大きないくさ所存しょぞんせねばなりません。物と、人力とを、あわせて最高に駆使くしするには。——ですから、やはり宿将中の重鎮たるおひとを
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが針目青年には、これがよくわかっていて、論文中いたるところにこれを駆使くししている。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さきには、京都の紹巴じょうはに招き状を送り、いまは愛宕の参籠さんろうを先触れさせていた。彼は、天の味方を信じながら、天のまなこをあざむくことに、自己の聡明を駆使くししていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今夜の芸はちと首賭くびかけ仕事であったな。だが、これでまず、殿をうごかす理由は出来たというもの。……何の、羽柴ずれや、黒田らに、別所一族が足軽あしがる代りに駆使くしされてたまるものではない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)