風趣ふうしゅ)” の例文
抱一ほういつが句に「山茶花さざんかや根岸はおなじ垣つゞき」また「さゞん花や根岸たづぬる革ふばこ」また一種の風趣ふうしゅならずや
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「この陣中にも、何もなくなって来たが、壺酒こしゅ乏しければ風趣ふうしゅを酌むじゃ。久しぶり水入らずで——」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
居ながらにして幽邃閑寂ゆうすいかんじゃくなる山峡さんきょう風趣ふうしゅしのび、渓流けいりゅうひびき潺湲せんかんたるも尾の上のさくら靉靆あいたいたるもことごとく心眼心耳に浮び来り、花もかすみもその声のうちに備わりて身は紅塵万丈こうじんばんじょうの都門にあるを忘るべし
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかし、この同年輩の若者も、客間につくと、ほどよく客振りを保って、やがて運ばれてくる折敷おりしきさかな高坏たかつき銚子ちょうしなどを前にしても、酔うまでは、なかなか遠慮めいた風趣ふうしゅも示す。