風炉ふろ)” の例文
火おけは南部ぎりのお丸胴でね。水屋があって、風炉ふろには松風の音がたぎっているし、これはまたどうでがす。気がきいてるじゃござんせんか。
第四章はもっぱら茶器の二十四種を列挙してこれについての記述であって、風炉ふろ(一〇)に始まり、これらのすべての道具を入れる都籃ちゃだんすに終わっている。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
お絹はいつでもお茶のはいるように、瀟洒しょうしゃな瀬戸の風炉ふろに火をいけて、古風な鉄瓶に湯をたぎらせておいた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
とわしはそう思うがと、老画師はいちど語を切って、静に、風炉ふろの上のかめから茶をいで、蕭照にも与え
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○十二日 小雨、やや寒し。台子だいすを出し風炉ふろに火を入る。花買いに四目の花屋に行く。紫菀しおん女郎花おみなえしとをえらびて携え帰る。茶を飲みながら兼題の歌、橋十首を作る。
草花日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
これを忘れた者は茶客の資格が無いものと見なされて馬鹿を見る事になるのである。夏は炉のかわりに風炉ふろを備えて置く事になっているが、風炉といっても、据風呂ではない。
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おくみは女中に手伝わせて、茶の道具をはこんで来、土風炉ふろで、茶をてた。
延若の政岡が風炉ふろ先きの屏風にひしと身を寄せて忍び泣きをしてゐると、「をさなけれども天然に太守の心備はつ」た筈の延宝の鶴千代が、この頃の寒さに、ついこらへかねて小便しゝたくなつた事だ。
『今来るでせう。ああ、小使が風炉ふろを沸かしておけば可いがなあ。』
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)