面子メンツ)” の例文
そこまで面子メンツをつぶされながら、それでも彼女は気位だけは持ちつづけてセルゲイとの間にはじめて持ちあがったこの痴話げんかに
おれはおれの面子メンツを立てるためでなく、道をけなされたことを怒っているみたいだ。しかし電話をかけたことで、彼はやや気分が晴れた。
記憶 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
逢わせてくれなくてもそれが私の面子メンツにどれほど影響するという問題ではなかったが、こうやって心配し切っている人々を眺めていると
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「勅を以て取り上げらるるはお気の毒の限りですし、それでは当人の面子メンツもありませんから私が参ってみずから頂戴しましょう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こいつをやるのは西風戦シーフォンせん北風戦ペーフォンせんといったように、四人の面子メンツがお互に、「ここで大きいものを作って他家たけよりリードしよう」
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
冗談に紛らせたくらゐでは到底面子メンツ(体面)の保てないのを知ると、いきなり陶は——墨をたつぷり含んでゐる筆を額めがけてはふりつけた。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
ラインといっても、いろいろだ。マッカーサー・ライン、ライン、赤線に青線……市には市警の面子メンツというものがある。こんなところで、大きな顔でショバを
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
所謂外見的な面子メンツを保つために、低い限度を自分の最大限として稼ぐ気は家のことその他毛頭ありません。でも最低五六十円はなくてはならない。あれは、その話。
「これは、ちかごろ、勇ましいことをきいたものだ。武士は額の傷を恥じる。支那で面子メンツというな。顔が立つ立たないとは昔からきいているが、当世の女流はお尻で顔を立てるのかい」
行雲流水 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「それは自分の面子メンツからだろう」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
彼の意思の対象は蜀軍よりも、むしろ司馬懿との賭にあった。いや自己の小さい意地や面子メンツにとらわれていたというほうが適切であろう。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一緒にたくを囲んで闘った面子メンツの一人が、自分の二千をほとんどみんなさらってゆき、その面子一人が断然一人勝ちでプラス四千点にもなったというが、麻雀大会閉会後
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こうしたら、どうだろうね? 発見したのはあの子供たちだが、解読してやったのは僕らなんだから、結局僕らは発見者と同様な立場にある。そこで一つ発見者の面子メンツ
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
……かりに、王様が殺されたとすれば、如何に面子メンツを重んじる政府だってもはや施す術がない。王様の換玉なんか置いたって今さら追いつきはしない。……なんとお判りか。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その小心な面子メンツを保つために、義昭が払った痩せ我慢が何と高価についたことかと思って、おかしくなった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四人の面子メンツが坐っているはず麻雀卓マージャンテーブルから、一人が立って便所に行ったりすることは、よくあることではないか。それに自分は何故、こんなことを気にしているのだろう。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
耳がガンガンするわ……面子メンツはあなただけのことではないでしょう。
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
見事、からかわれている父のはじをそそいだのである。現今中国人のあいだでよくいわれる「面子メンツ」なることばの語源がこの故事からきているものか否かは知らない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
進む決断はやすく、退かせる果断はむずかしい。——内部の不平、世上のあざけり、自己の面子メンツ、あらゆる意味で、甘んじて負けて引き退がるほど、困難なことはない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軽々たる世上の思わくや面子メンツにとらわれて、頑として、一真田の小城にかかわり、自身、それに動いた場合はどうなるかと想像すれば、まず第一に、隣接の大国北条が
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう些細な事すらも、すぐ近所への不体裁とか面子メンツを憚られるほど、清潔というのか、社会秩序があったというのか、とにかく静かで、ひっそり閑とした世間であった。
郝萌かくほうを淮南へ飛ばし、袁術の肚を当ってみたわけであるが、先も足もとを見て、妥協しかねる条件を持ち出すなど、不遜な態度を示したので、呂布は自己の面子メンツとしても、また
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それもはかなく、いよいよ面子メンツもなく——最後の切札を選ぶとなれば——淮南わいなん袁術えんじゅつへすがって、無条件降伏を申し入れ、袁術の援けをかりて、猛然、反抗して来るにちがいありません
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その賢明は、やがて支那國民の、最も正しい面子メンツとならう。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)