難物なんぶつ)” の例文
見た瞬間、この事件は難物なんぶつだと思ったが果たしてそうだった。この上は解剖の結果を待って、何かの手掛かりを得るより他に仕方がない
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
むずかしいようでも、そのほうはやり方次第でやれるが、難物なんぶつは、毎夜つづきの部屋に寝る母の資子である。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「それじゃどこも同じことですかな。僕の方は難物なんぶついこまれて皆キュウキュウいっています」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかも強情無類な難物なんぶつを、いかに、自己のの上に乗せるかを——彼は、茶々を愛する如く、摩耶をあやすが如く、於通の軟化を待つがごとく、興味をもって対している。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
種々さま/″\いはくのつきし難物なんぶつのよしなれども、もたねばならぬ義理ぎりありてひきうけしにや、それともちゝこのみて申うけしか、そのへんたしかならねど勢力せいりよくおさ/\女房天下にようぼうてんかと申やうな景色けしきなれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
推理は、やっと半道はんみち来たばかりだ。その先が、難物なんぶつだ。とても手におえそうもない。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
竜之助はかの大兵だいひょうの男よりは、この少年に眼をつけざるを得なかった、というのは、あとの「すくい胴」はとにかく、前の足をはずす巧妙さ、自分にも覚えがあるが、柳剛流の足は難物なんぶつ
「若様の方は時おりお手あてを申しあげておりましたから、かなり小さくなっています。内藤君の方は難物なんぶつですよ。奥へひろがってくるみぐらいの大きさになっています」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)