隠匿かくま)” の例文
旧字:隱匿
隠匿かくまっておく事だ。この部屋の半分だけ俺に貸しておくれよ。俺は長椅子の上へ寝りゃたくさんだから、それからおれに必要なものを
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
それを近衛様がご心配あそばされ、吉之助様にお頼みになり、ご上人様をどこへなと安全なところへ、お隠匿かくまいなさろうとなされましたので。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その拍子にふと見れば、こはそも如何いかに男は間違まがかたなく若旦那柳絮りゅうじょ、女はわが家に隠匿かくまったおそのではないか。しまった事をした。情ない事をした。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と言って神尾が隠匿かくまわなければそのほかに、竜之助を世話をする者があるとは思われないことであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お力——それは、沖田総司に、隠匿かくまわれた女であるが、植甚の職人、留吉を相手に、植甚の庭で、話していた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身受する力も望みもなくなって唯いつまでも大金のかかった女を人の家に隠匿かくまって置いたなら、わが身のみかは恩義ある師匠にまでいかなる難儀を掛けるもはかられぬ。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
けれども、これは永久に甲府を去るの門出かどでではない、自分は能登守に教えられた通り、これより程遠からぬ松里まつさと村の恵林寺へ落ちて、暫らくそこに隠匿かくまってもらうのである。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「はて隠匿かくまうとおっしゃいますのは? ああ解りました。ではあなた様は、また当邸へおいでなさる気で?」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
けれども、それは兵馬がいて突き留めたいことではありません。神尾が果して机竜之助を隠匿かくまっているかいないかということを知りたいのが、兵馬の唯一の望みであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その姫の手で隠匿かくまうからには、いよいよ俺の持ち物にはならぬ。……だから方針を変えるのよ。おとりとして使うのよ。……さて会議だ、どうなったかしらん。……
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俺に人を隠匿かくまえというのか。そりゃ大方謀叛人むほんにんとか兇状持きょうじょうもちとか、ろくな奴じゃあるめえ。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ただに酔興で貴郎様を、何であの時お助けしましょうぞ。……その後もここにお隠匿かくまいし、何の酔興でご介抱しましょう。……心に想いがあるからでござんす」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その評判をあおるのは神尾主膳の一派であるらしく、汚らわしい者を妾にかかえたのみならず、破牢の罪人を隠匿かくまって逃がしてやったり、甚だしいのは盗賊を出没させて城中城下から金を盗ませ
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
同志の白石正一郎様のおうちに、しばらくご滞在なさいましたが、さらに博多に移りまして、藤井良節様という勤王家のお屋敷へ、お隠匿かくまいなさいましてございます。
犬神娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
或夜お君は家を抜け出し彼のもとへ走って来た。彼は決して木石では無くむしろ人一倍感情のはげしい血気盛んの若者だったので喜んでお君を隠匿かくまった。これが第三の失敗である。
それを陣十郎が身を挺し、養われかくまわれた恩をも不顧かえりみず、猪之松の乾児こぶんを幾人となく切り捨て、自分を助けて遠く走り、農家に隠匿かくまい今日まで、安穏に生活くらしをさせてくれた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
沖田さんに隠匿かくまわれ、そいつを縁に沖田さんへ接近ちかづいたのも、お前と最初からの相談ずく、そこ迄二人で仕組んで来たものを、今になってお前さんに沖田さんを殺され、功を奪われたんじゃア
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
(陣十郎とかいうお侍さん、随分怖そうなお侍さんだが、あんな人の眼をこっそり盗んで、鴫澤主水しぎさわもんどとかいうお侍さんを、こんな所へ隠匿かくまうなんて……血腥さい事件でも起こらなけりゃアいいが)
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「何故俺達の敵の子を神聖な社殿などへ隠匿かくまうのだ?」
「何んでもござらぬ。隠匿かくまってくだされ」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)