陸地くがち)” の例文
この島をはずしたら、この先、またいつ陸地くがちにめぐりあうあてもないことだから、なにはどうでも、思いきって島にあがるほうがいいと思うのだが
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
相剋そうこくし、内争し、相疑えば、かならず曹操に乗ぜられん。——またこのたびの出師すいしにその戦端を陸地くがちから選ぶは不利。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二つの浮き岩は唸りながら、互いに相手を憎むかのように、力任せに衝突ぶつかり合っていた。飛び散る泡沫しぶきは霧を作り、その霧のおもてへ虹が立ち、その虹の端の一方は、陸地くがち断崖がけに懸かっていた。
飛出とびいだしける故主は何事なるやと狼狽うろたへながら後より追馳おひかけ行しに其はやき事とぶが如く勿々なか/\追着おひつく事能はず待ね/\と呼止よびとむれど靱負は一向みゝにも入ず足に任せて馳行はせゆきしがやが海邊うみべに到りなみの上を馳行はせゆく陸地くがち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いまもってみなの亡骸なきがらを雑倉にとりおさめてあるが、このになっても陸地くがちに辿り着かぬのは、ああいうものを船に置いてあるので、その穢れで祟りを受けているのではあるまいか。
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
さて、おぬしたちはみな成仏したことだから、わしの言うことを、ほとけの心でおだやかに聞いてくれるだろう。おぬしたちの亡骸のことだが、こうしていてもいつ陸地くがちへ着くという当てもない。
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
二ヵ月ぶりに陸地くがちの形らしいものを見たので、みな舷へ出て
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)