陰陽かげひなた)” の例文
ひかるを見ておつやさんが母と叔母の前で陰陽かげひなたをすると云つて罵しつておいでになつた日には、私は思はずヒステリーに感染したはづかしい真似をしました。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
月日の経つのは早いもので、十一年が其の間奉公に陰陽かげひなたなく、実に身をに砕いての働き、し寅に起き、一寸いっすんも油断せず身体を苦しめ、身を惜まず働きまする。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
旨味おいし南瓜かぼちゃを食べさせないと云っては、おはちの飯に醤油しょうゆけて賄方まかないかたいじめたり、舎監のひねくれた老婦の顔色を見て、陰陽かげひなたに物を言ったりする女学生の群の中に入っていては
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
気心の知れない新しい主人の家へ来て、一生懸命に働いている間にも、彼女は思うことが沢山あったに相違ない。いくら陰陽かげひなたがないといっても、主人には見せられぬ涙もあったろう。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
女乞食の掘出しもの、恩に感じて老実まめ々々しく、陰陽かげひなたなく立働き、水もめば、米もぎ、御膳ごぜんも炊けば、お針の手も利き、仲働なかばたらきから勝手の事、拭掃除まで一人で背負しょって、いささかも骨をおしまず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)