闘鶏とうけい)” の例文
「じつは、わたしのところにつよ闘鶏とうけいが一いる。かつてけたことがないのだから、ひとつおまえさんのこのとりたたかわしてみましょう。」
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうえ四季の物見行楽ものみこうらくだの、闘鶏とうけいだの、け弓だのと、およそ今ほど、遊びごとやけごとのさかんなときは、かつてにもない。
この点ではこの若者たちも闘鶏とうけい闘犬とうけん見物けんぶつ同様、残忍でもあれば冷酷でもあった。彼等はもう猪首の若者に特別な好意を持たなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
艦隊かんたいのように魚以上の堂々とした隊列で遊弋し、また闘鶏とうけいのように互いに瞬間をするどつつき合う。身体に燃えるぬめりを水で扱き取ろうとして異様にひるがえり、翻り、翻る。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
当主の家成は、五十がらみの、人のさそうな男だった。右大弁うだいべんの官職にあったが、いまは退官して、闘鶏とうけいにばかり熱心である。
「このとおりだ。闘鶏とうけいをさせるなら、どこからでも相手あいてになるのをれてくるがいい、けっして、このとりけないから。」
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
闘鶏とうけいのカケ合せでも見るようにお十夜はこう考えて、冷淡に落ちついていたが、まさか、血をみるまでほうってもおけず、やッと二人をかき分けて
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじめのうちはどちらがつか、けるかわからないほどでありましたが、ついに金持かねもちのとりともだちの闘鶏とうけいかされて、だらけになってたおれてしまいました。
金持ちと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
パッと両方の口からとびだした蛾次郎と竹童とは、王庭おうてい血戦けっせんをいどむ闘鶏とうけいのように、ジリジリとよりあって、いまにもつかみ合いそうなかたちをとった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
躍り出た二人はすでに、二羽の闘鶏とうけいが、逆羽さかばを立てて、戦意をぎ合う姿だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)