閑散ひま)” の例文
多くは博労ばくろうたちだった。この四、五日立っていた馬市の総勘定も、きのうで片づいたとかで、ここの旅籠はたごもきょうから閑散ひまになるらしい。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
取手の宿場街の裏通りにある茶屋旅籠ちゃやはたご安孫子屋あびこや店頭みせさきは、今が閑散ひま潮時外しおどきはずれである。それは秋の日の午後のこと。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
いつたいに夏場は閑散ひまなので、時折一晩二晩泊る人があるばかりで、今では月極の三田と大貫の外には客が無かつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
御用筋が閑散ひまなのでいつものとおり海老床の梳場すきばで晩くまでとぐろを巻いていた三人が、さすがにもう莫迦話にも飽きが来て巣へ帰ってほどないころ、勘次は親分の床を敷き
さだめしいま時分じぶん閑散ひまだらうと、その閑散ひまねらつてると案外あんぐわいさうでもなかつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
きょうは吾輩閑散ひまだからね。少々メートルを上げるかも知れないよ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)