ベル)” の例文
ベルがある。水を入れた瓶がある。そこらも国のと違っていない。おれは右党の席を一しょう懸命注意して見た。
(新字新仮名) / オシップ・ディモフ(著)
母は驚き、途方にれたる折しも、かどくるまとどまりて、格子のベルの鳴るは夫の帰来かへりか、次手ついで悪しと胸をとどろかして、直道の肩を揺りうごかしつつ、声を潜めて口早に
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そしてがらん/\と、けたゝましくベルを振つた。それから同じ地名を、近い所で呼んだ。それから又プラツトフオオムへ出て、もう一度同じ地名を呼んだ。厭な鐸の音が反復して聞える。
駆落 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
分署ぶんしよまへとほり……せはしい電車でんしやベル……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
場内の彼方かなたよりとどろベルはこの響と混雑との中を貫きて奔注せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
妻はその夜の騒擾とりこみ、次の日の気労きづかれに、血の道を悩める心地ここちにて、懵々うつらうつらとなりては驚かされつつありける耳元に、格子こうしベルとどろきければ、はや夫の帰来かへりかと疑ひも果てぬに、紙門ふすまを開きてあらはせる姿は
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)