鎌鼬かまいたち)” の例文
「お松を殺した刄物は、此處にある筈だ、若し此處に何にもなかつたら、お松は水の中で鎌鼬かまいたちに逢つたとでも思はなきアなるまい」
黒旋風こくせんぷうのようなものが、後ろの浜屋の天水桶の蔭から捲き起ったと見ると、米友の背後から、さながら鎌鼬かまいたちのように飛びついたのです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それは鎌いたちに違いないと人々は言っていたが、その鎌鼬かまいたちという名のことで、赤星重右あかぼしじゅううのことが、どういう屋敷うちでも、口の上にのぼった。
天狗 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
天狗てんぐ所業しわざと云ってしまえばそれまでだが、いわゆる鎌鼬かまいたち悪戯いたずらではござるまいか」という説もあった。
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
たとえば鎌鼬かまいたちの現象がかりに前記のような事であるとすれば、ほんとうの科学的研究は実はそこから始まるので、前に述べた事はただ問題の構成フォーミュレーションであって解決ソリューションではない。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
膝からまた真白まっしろ通草あけびのよう、さくり切れたは、俗に鎌鼬かまいたちけたと言う。間々ある事とか。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いわんや、場所も形も大きさも、いずれも寸分違わないということになれば、人間わざの及ぶところではないのである。けっきょく、これは鎌鼬かまいたちの仕業だということになった。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
古来、不可解として伝えられたる越後の七不思議は、今日ではもはや不思議ではないと知られたが、ただ、今日なお妖怪の作用に帰せられているのは鎌鼬かまいたちである。この怪事が越後地方に最も多い。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「お松を殺した刃物は、ここにあるはずだ、もしここに何にもなかったら、お松は水の中で鎌鼬かまいたちに逢ったとでも思わなきゃアなるまい」
二つの身体からだは再びもつれ合ったが、それも長いことではない、今度は米友の方が、鎌鼬かまいたちのように後ろへ走り出しました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その後に私の問題となった他の例は「鎌鼬かまいたち」と称する化け物の事である。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「ね、銭形の、こいつは鎌鼬かまいたちじゃなくて、お稲荷様かも知れないぜ。主人は鳥居へ小便でも掛けたことがあるんじゃないか」
鎌鼬かまいたちは刃物を置いて行くはずはないし、番台には人が居ないにしても、奥から見通しの場所へ、ノコノコ入って来て人一人殺して行くはずはなし
鎌鼬かまいたちなら、銭形に付くか、筋か骨に沿って曲った傷が付くから、やはり人が切ったに間違いはないね、——ところで、切口の肉は、どんな工合になっているんだ」
「また何か縮尻しくじりをやったのか、仕様のない男だ——まアいい、奉行所の方は、鎌鼬かまいたちにしておこう」
「又何か縮尻しゆくじりをやつたのか、仕樣の無い男だ——まア宜い、奉行所の方は、鎌鼬かまいたちにして置かう」
「八兄哥、血のことを気にするようじゃ、鎌鼬かまいたちという見当だね。鎌鼬は傷の深い割に血の出ないものだっていうが、江戸は上様うえさまのお膝元で、鎌鼬は昔から出ねえことになっているぜ」
お勢、俺は今日一日岡つ引ぢやないと言つた筈だ。——駒次郎は鎌鼬かまいたちにやられて死んだんだよ。放つて置けば證據がないから。誰も氣がつく筈はない、勝藏は笹野の旦那にお願ひして、繩を
お勢、俺は今日一日岡っ引じゃないと言ったはずだ。——駒次郎は鎌鼬かまいたちにやられて死んだんだよ。放っておけば証拠がないから、誰も気がつくはずはない、勝蔵は笹野の旦那にお願いして、縄を
「八、俺にはよく解ったよ、これは自害でなきゃ鎌鼬かまいたちかも知れないよ」
「八、俺にはよく解つたよ、これは自害でなきや鎌鼬かまいたちかも知れないよ」
「そんな間拔けなものは殘しやしませんよ。あれは鎌鼬かまいたちですね」
「若殿の金之進は、鎌鼬かまいたちにやられたことにして置けば宜いのだ」
「すると親分、下手人は無くなりますね。まさか鎌鼬かまいたちでも」
「今度のは、鎌鼬かまいたちや自害ぢやないぜ」
「今度のは、鎌鼬かまいたちや自害じゃないぜ」
「へエ、矢つ張り鎌鼬かまいたちか何んかで?」
「ヘエ、やっぱり鎌鼬かまいたちかなんかで?」
「あれは鎌鼬かまいたちだな」
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「すると鎌鼬かまいたちかな」