きた)” の例文
これをきたえ直して造った新しい鋭利なメスで、数千年来人間の脳の中にへばり付いていたいわゆる常識的な時空の観念を悉皆しっかい削り取った。
アインシュタイン (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
先祖以来、田螺たにしつっつくにきたへた口も、さて、がつくりと参つたわ。おかげしたの根がゆるんだ。しゃくだがよ、振放ふりはなして素飛すっとばいたまでの事だ。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
上部に鉄の格子こうし穿けて中央の孔から鉄砲を打つと云う仕懸しかけの後世のものでは無論ない。いずれの時、何者がきたえた盾かは盾の主人なるウィリアムさえ知らぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三十五六の屈竟くっきょうおのこ、火水にきたえ上げた鉄造くろがねづくりの体格で、見るからに頼もしいのが、沓脱くつぬぎの上へ脱いだ笠を仰向あおむけにして、両掛の旅荷物、小造こづくりなのを縁にせて、慇懃いんぎん斉眉かしずく風あり。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)