鉄窓てっそう)” の例文
旧字:鐵窓
獄舎の鉄窓てっそうをもれる月光のもとに、絞首台の幻影をきわけながらペンを走らす犯罪日誌は、本人にとっていささかの悦びをももたらさないであろう。然るに自分はどうだ。
鼻に基く殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
弱い女を無視してそれを鉄窓てっそうの中に押し込めたのが今日までの道徳というものであるといっている。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おりから淡々あわあわしいつきひかり鉄窓てっそうれて、ゆかうえあみたるごと墨画すみえゆめのように浮出うきだしたのは、いおうようなく、凄絶せいぜつまた惨絶さんぜつきわみであった、アンドレイ、エヒミチはよこたわったまま
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれらが、鉄窓てっそうもとで、やせた両手りょうてたかくさしばして
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)