なま)” の例文
「目の覺めるやうな威勢のいゝ仕事は無えものかなア。此節のやうに、掻つ拂ひや小泥棒ばかり追つ掛け廻して居た日にや腕がなまつて仕樣がねえ」
「——とは叱りましたが、深く思うてみれば、下手へた上手じょうずの差。また、無事がつづくほど、人間はなまるという。そなたが負けたのは、当り前なことかも知れぬ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はい、もう、なまってはいられませぬ。必ずすぐに、敵のふところに食い入るつもり——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
六七年も、洋服を着て暖かい日向ひなたを選み/\坊ちゃん嬢ちゃんの草花いじりの相手をしてなまってしまったこの身体が、どうして再びあの吹きさらしとつちの世界へ、苦痛に噛まれに戻れよう。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「目の覚めるような威勢のいい仕事はねえものかなア。この節のように、っ払いや小泥棒ばかり追っ掛け廻していた日にゃア腕がなまって仕様がねえ」
将門は一心不乱の鬼神きじんになった。そして、直接、敵兵に触れ、悍馬のあしもとに蹴ちらしながら、長柄の刃が血でなまるほど、縦横無尽に、いで行った。そして、ついに、主将の陣へ、迫りかけた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)