野葡萄のぶだう)” の例文
今日はもう三時まへだから、通草あけびをとつたり、野葡萄のぶだうをとつて食つてちや、あかんぞ。今日は、一番おしまひの日だからな。
栗ひろひ週間 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
ずうっと下の方の野原でたった一人野葡萄のぶだうを喰べてゐましたら馬番の理助が欝金うこんの切れを首に巻いて木炭すみの空俵をしょって大股おほまたに通りかかったのでした。
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
唯、野葡萄のぶだうか何かのつるが、灌木の一むらにからみついてゐる中を、一疋の狐が、暖かな毛の色を、傾きかけた日にさらしながら、のそりのそり歩いて行く。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
闌秋らんしう化性けしやうしたる如き桔梗ききやう蜻蛉とんぼの眼球の如き野葡萄のぶだうの実、これらを束ねて地に引きゑたる間より、もみの木のひよろりと一際ひときは高く、色波の旋律を指揮する童子の如くに立てるが
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
床から拔け出して、野葡萄のぶだうのやうな眼を剥いた大親仁。
野葡萄のぶだうさへも瑠璃るりを掛く。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)