邪険じゃけん)” の例文
旧字:邪險
なみだを目に一ぱいにしたかとみるまに、いてたわが子を邪険じゃけんにかきのけて、おいおい声を立ててきだすようなことがあるのである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
恋い慕うものならば、馬士うまかたでも船頭でも、われら坊主でも、無下むげ振切ふりきって邪険じゃけんにはしそうもない、仮令たとえ恋はかなえぬまでも、しかるべき返歌はありそうな。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
継子の夫を持てばやはり違うのかと奉公人たちはかんたんにすかされて、お定の方へ眼を配るとお定もお光にだけは邪険じゃけんにするような気配けはいはないようだった。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
けれども、邪険じゃけんなクシベシは平気な顔をして、言いますには、「そんなに隠れ蓑が返してしければ、返してやらぬこともないが、その代りただでは駄目だめだよ」
蕗の下の神様 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
「チョッ」と舌打をし、彼の腕を邪険じゃけんにふりほどいた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
予は思わずそう邪険じゃけんにいって帰途につく。兄夫婦も予もなお無言でおれば、子どもらはわけもわからずながら人々の前をかねるのか、ふたりは話しながらもひそひそと語り合ってる。
紅黄録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
邪険じゃけんも大抵にするものだよ。お前あんまりじゃないかね。」
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)