はま)” の例文
それは西洋人の趣味嗜好しこうに投じ、横浜貿易の貿易品にそっくりはまったのでありますから、それはまことに素晴らしい勢いとなった。
「いずくへ? とは、はて知れたこと。隠密に出るのだ。あんまり、柄にはまった役割りでもねえがの。」
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼はガーエフ役に廻り、ロパーヒン役はレオニードフという荒事をはまり役とする若い役者が持った。
一つは馬琴の人物が市井しせいの町家の型にはまらず、戯作者仲間の空気とも、容れなかったからであろう。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
産む人の体質にも由る事でせうが、わたしの経験した所ではよく其れが当てはまる。此前の産も重かつたが、今度のは更に重かつた。産む時ばかりで無く、産前産後に亘つて苦痛が多かつた。
産褥の記 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
其れからしばらく適当な役者を欠いて居たので上場せずに居たロスタンの「シラノ・ド・ベルジユラツク」を、ル・バルヂイ氏のシラノで演ずるであらう、其れが大変なはまり役であらうと評判されて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
第一にその人物に於ける「はまり役」といふべきである。
俳優の素質 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
巧く注文にはまらなかったのであった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
レオニードフは『ジュリアス・シーザー』のカッシアスとか、『カラマーゾフ』のドミートリイとか、農民一揆のプガチョーフなどをはまやくとするいわば荒事師である。
よく三人の柄にはまった役割りで、大次郎は武を好み、佐助は、顔は二た眼と見られない醜面の生まれつきだが、おそろしく目端めはしがきいて、利に速い、これを商才に用いたら
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)