遠矢とおや)” の例文
なしていて来ました。——ですから、第一線の小勢では、遠矢とおやをかけても、袋づつみに、将門を討つなどという事はできません
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが如何いかに威張っても、正宗まさむねの剣も、鎮西八郎ちんぜいはちろう本間孫四郎ほんままごしろうの様な遠矢とおやも大砲の前にはつまらぬ。親船で軍艦には向えぬ。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
お松は駈けながら息を切って、こう言うと、この遠矢とおやが幾分か米友に利いたと見えて、米友は急に立ち止まり
「や、遠矢とおやじゃ。さりとは狼藉……」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「城兵が死を決して出てくる公算こうさんは多分にある。まず、さくをたてよ。桝形ますがた望楼ぼうろうきずけ。そして、城内へ、遠矢とおや、鉄砲を撃ちこみ、昼も夜も眠らすな」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂本さかもとの町に弓術きゅうじゅつの道場をひらいて、都にまで名のきこえている代々木流よよぎりゅう遠矢とおや達人たつじん山県蔦之助やまがたつたのすけという者であるが、町の人は名をよばずに、今為朝いまためともとあだなしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大将伊那丸いなまるとばりをはらってそれへきたが、閣上かくじょうの呂宋兵衛は、いちはやく屋根の上へとびうつり、九りんもとに身をかがめてしまったので、遠矢とおやかけるすべもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんでござんしょうか——この遠駆とおがけの勝負の眼目がんもくは、つまり、あの白鳥しらとりみね大鳥居おおとりいまでいって、さっきの遠矢とおやを、一本ずつ持ってけえってくりゃあよろしいンですね」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠矢とおやか小銃のほかは、さしたる武器もない時代なので、九鬼嘉隆の水軍は、陸地の家康、信雄の眼からも、その船上の人影まで見えるくらいな近距離に、なすこともなく、遊弋ゆうよくしていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)