はる)” の例文
津の人と、和泉の人ははるかに基経のいるところから遠ざかって行き、やっと橘の姿も見えるほどだった。ほとんど、顔を打合わせるようにはしりに馳った。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
アーズアンいわく、モセスの書に拠ればフリギヤ人等よりはるか前エジプト人が戦車を用いたが、馬幾疋附けたか知れずと。
すでに、江戸のことははるかに遠かった。村田や青山や、その他の多くの知人は、(柳沢系に代った)新しい勢力のなかで、それぞれの席を占めているであろう。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それでも冬になって、煖炉だんろいて、戸を締め切っている時よりは、夏のこの頃がはるかにましである。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それぞれ防禦ぼうぎょの策を講じ、以て安全の道を図らんと欲し、下山後苦心経営すること一日に非ずといえども、在来の観測所に比すれば、規摸はるかに宏大を要するが故に
津の国を吹く風の音いろがすすきの穂がしらをしずかにゆすっては、はるかにすぎてゆくような遠い思いであった。とらえがたいものが物の精神こころになって見えて来た。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そのごとく声聞しょうもん縁覚えんがくよりは菩薩はるかに功徳殊勝なりとし、観音救世の績殊に著しいから、前述五百商人を救うた天馬などをその化身とし、追々馬は皆観音の眷属としたのじゃ。
それは一羽のかいつむりが水のなかにもぐり入った姿だった。ほとんどつぶてを打ったほどにしか見えないかいつむりは、はっきりと何鳥だかの区別さえできかねるほどはるかなものだった。
姫たちばな (新字新仮名) / 室生犀星(著)
無妻で通した聖人も人間並みに暮した靴屋も功徳にかわりがないと知って、なるほど穴に居るより、これは一番穴——がはるかましとの断定、その頃来英中の現在文部大臣鎌田栄吉君に
すてが再びとりでの前に立って、例の手をこまぬいて見やった時に、はるかな山平に袴野ノ麿と貝ノ馬介とが、みやこの先刻の女を間に置いて、なにか問答の渡り合いでもしているふうであった。
さて十分殺獲術を究めた上ならでは子と離れぬ、若い虎は老虎よりはるかに物多く殺し一度に三、四牛を殺す事あり、老虎は一度に一つより多く殺す事まれで、それも三、四また七日に一度だ
その例はるかに男より多くその話もまたすこぶる多趣だ。