やぼね)” の例文
やぼねの下に流るる道は、細き水銀の川のごとく、柱の黒い家のさま、あたかもかわうそ祭礼まつりをして、白張しらはり地口行燈じぐちあんどんを掛連ねた、鉄橋を渡るようである。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なお渠は緘黙かんもくせり。そのくちびるを鼓動すべき力は、渠の両腕に奮いて、馬蹄ばていたちまち高くぐれば、車輪はそのやぼねの見るべからざるまでに快転せり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お手の指が白々と、こうやぼねの上で、糸車に、はい、綿屑がかかったげに、月の光で動いたらばの、ぐるぐるぐると輪が廻って、じじいどののせなかへ、荷車が、乗被のっかぶさるではござりませぬか。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前なるお美津は、小鼓に八雲琴やくもごと、六人ずつが両側に、ハオ、イヤ、と拍子を取って、金蒔絵きんまきえ銀鋲ぎんびょう打った欄干づき、やぼねも漆の車屋台に、前囃子まえばやしとて楽を奏する、その十二人と同じ風俗。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はい、両手を下げて、白いその両方のてのひらを合わせて、がっくりとなった嘉吉の首を、四五本目のやぼねあたりで、上へささげて持たっせえた。おもみがかかったか、姿を絞って、肩がほっそりしましたげなよ。」
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
足をばたばたの、手によいよい、やぼねはずしそうにもがきますわの。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)