かゞと)” の例文
児玉氏はかう言つて、自分の脚の下が、外国の土地である事をたしかめるやうに、二三度床板をくつかゞとで蹴飛ばした。
そこでぢいやがちひさな麻裏草履あさうらざうりつけてまして、かゞとはうひもをつけてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
応募兵は自分が螽斯ばつたのやうにつよい脚を持つてゐるのを見せるために、二三度靴のかゞと地面ぢべたを蹴つてみせた。
士官は吐き出すやうに言つて、葉つ葉を地面ぢづらに投げ捨てた。そして思ひきり強くくつかゞとで踏みにじつた。
老人は一寸手を挙げて挨拶するとかゞとの上でくるりと身体からだむきへて、元気よく引き下つて往つた。
外套の隠しに両手を突込むで、停車場前のひろを歩きながら、大きな靴のかゞとやけ地面ぢべたを蹴散らしてみたが、地面ぢべたを蹴つたところで、急行列車がとまる訳でもなかつた。
英国のある停車場ていしやぢやうの駅長はグラツドストーンが落して往つたくつかゞとを拾つて、丁寧に箱入にしてしまつておいたといふから、黄河の濁り水を克明に瓶に入れて持つて帰つたからといつて
と言つて、その貰ひ物の履のかゞとで馬のやうに床板をつたさうだ。
すべての男はこんな時くつかゞとのやうな痛ましい表情をするものだ。