足懸あしがか)” の例文
それをいかだに組んでいるいとまもなく、明智の猛士たちは跳び渡って、石垣の下へゆく。そして石垣の隙に、足懸あしがかりを打ちこんでは、上へ上へとじのぼった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
相悪あいにく大降り、おまけに、横尾谷から驀然ばくぜん吹き上ぐる濃霧で、足懸あしがかりさえ見定めかね、暫時茫然として、雨霧のしずまるをてども、止みそうもない、時に四時三十分。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
巌角いわかどきざを入れて、これを足懸あしがかりにして、こちらの堤防どてあがるんですな。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前足だけは首尾よく棚のふちにかかったが後足あとあしは宙にもがいている。尻尾には最前の黒いものが、死ぬとも離るまじき勢で喰い下っている。吾輩はあやうい。前足をえて足懸あしがかりを深くしようとする。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金はわずか五十両だが、その金は、身共に取っても、平田殿の望みと同様に、出世の足懸あしがかりにしようと思っていた金だ。……それをお譲りするからには、いわば男が、生涯の立身を
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つとめて、自制しながら、金吾はいつか吾ながら見苦しくきこんで、何処か、飛び越えてゆく足懸あしがかりの石はないか、下流に丸木橋でもないか、と地だんだ踏みながら目を配っている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)