越後路えちごじ)” の例文
そう言って呼んでくる声を聞くようになりますと、さすがに山家やまがもいい陽気に向かいます。越後路えちごじからの女のわかめ売りの声です。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、孫八のうばは、その秋田辺のいわゆる(おかみん)ではない。越後路えちごじから流漂るひょうした、その頃は色白な年増であった。呼込んだ孫八が、九郎判官は恐れ多い。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅の男というのは、鼻かけ卜斎ぼくさい八風斎はっぷうさいであった。越後路えちごじへむかっていくかれは、蛾次郎がじろうを見うしなって、ひとりとなり、昨夜ゆうべはこの部落で、一夜をあかした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
野州路やしゅうじ越後路えちごじはその裏道で甲斐かい石和いさわ武蔵むさし石浜いしはまは横路である。富山や京都は全く別系統であって、富山が八犬の発祥地であるほかには本筋には何の連鎖もない。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
越後路えちごじから長野の方へ出まして、諸方を廻って参りました。これから御寒くなりますで、暖い方へ参りますでござりますわい」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三十有余人を一家いっけめて、信州、飛騨ひだ越後路えちごじ、甲州筋、諸国の深山幽谷ゆうこくの鬼を驚かし、魔をおびやかして、谷川へ伐出きりだす杉ひのきかしわを八方より積込ませ、漕入こぎいれさせ
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)