赫灼かくしゃく)” の例文
衆生をじめじめした暗い穴へ引摺ひきずってゆくのでなくて、赫灼かくしゃくたる光明を高く仰がしめるというような趣がいかにも尊げにみえる。
春の修善寺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『新著百種』は薄命なる才人三唖を暗黒なる生涯に送り出すと同時に天才露伴の『風流仏ふうりゅうぶつ』を開眼して赫灼かくしゃくたる前途を耀かがやかした。
高く茎を立て並びアノ赫灼かくしゃくたる真紅の花を咲かせて、そこかしこを装飾している光景は、誰の眼にも気がつかぬはずがない。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
がつ赫灼かくしゃくたる太陽たいようもとで、まつは、この曠野こうや王者おうじゃのごとく、ひとりそびえていました。
曠野 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おのの味を知らぬ原始の森は、その中へ踏み入るにしたがって一層威大な力を見せ、すなわち赫灼かくしゃくたる夏の日光さえその光を遮られ、森林の中は茫乎ぼうことして宵闇のさまを呈している。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのマカラム街には、赫灼かくしゃくたる陽線がこんな情景を点描していた——。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
私たちが夢にも知らないうちに、科学はこの赫灼かくしゃくたる動きとパッションをこころゆくまで享楽していたのだ。銀翼号と他の飛行機たちよ! このとおり頭を下げる。おんみらこそは新世紀の芸術だ。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
うつ州の城内に寺があって、その寺内に鉄塔神てつとうじんというのが祭られているが、その神霊赫灼かくしゃくたるものとして土地の人びとにも甚だ尊崇されていた。
彼女は後光ごこうを背負う仏陀のように、赫灼かくしゃくたる光明にあたりを輝かして立っていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)