資金もとで)” の例文
「それジワジワとおいでなすったぞ。この大江戸の話ばかりが資金もとでいらずの資金というものさ。田舎いなかの女をたらすにはこれに上越うえこすものはないて」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その東兵衛さまとやらがお出しになった資金もとでは、申せば東兵衛さまが御自身でおりになったものでございます。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
金廻かねまはりの惡い時の間に合せの意味と、もう一つには遊びの資金もとでを貢がせよう爲めだつたらしく、おりかは頭の物迄取られた事もかくさずに話したさうである。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
今日持っていった賭博ばくち資金もとで各自めいめいに相違なく返し遣わすのみならず、賃銀は望みに任するであろう。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なさる時は、それだけ資金もとでるようで、ちょっと損な気もしますが、さて仕上げて見ると、つまりその方が利廻りのい訳になるんだから、無学のものはとてもかないませんな
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それに寒いから、手を洗うにも湯を使うのだし、資金もとでのいらない湯でもたくさん飲んで体を暖めようという者達が何しろ十人近くいるのだから、たった一度の往復では足りようもない。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「おれのうちでも女の子が多いから、芸妓やをはじめると資金もとでらずだが——」
と、聴き慣らされてゐるさうで、伝説によると、ある鳥が寺の本堂の建立を思ひ立つたが、どうしてもその費用の工面がつかず、やつと杜鵑に頼み込んで、それだけの資金もとでを借出すことが出来た。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
しかし、その、きちがいになった東兵衛という男に、出した資金もとでをすっかり返してやって、そのうえ、具足屋の借財を一身に引きうけるとは、若松屋惣七という男は、涼しい気性の男だな。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)