きは)” の例文
よんどころない会合の席で、皮肉な若手と頑固な上役に盃を押しつけられ、進退きはまつて、彼は、粛然と膝を正し
美談附近 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
併しこの時は、門の扉は固く鎖してあり、稔麿は入ることが出来ない。その身は重傷であり、遂に進退きはまつて、門外に自決したのである。この時、年齢二十四であつた。
独断に廃業などして、小千円の負債の為めに両親が訴へられても顧みない量見かと云ふ様な脅迫に及ぶ、婦人も実に進退きはまつて、最後の書状を兼吉へ送り越したのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
おびたゞしく御用金に手をつけ、進退きはまつて——今から半年前腹を掻き切つて死んだのぢや
しかし其材料の扱方に於て、素人歴史家たるわたくしは我儘勝手な道を行くことゝする。路に迷つても好い。若し進退きはまつたら、わたくしはそこに筆を棄てよう。所謂いはゆる行当ばつたりである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)