諸方はう/″\)” の例文
わたしはお稻荷いなりさまの使つかひですよ。このやしろ番人ばんにんですよ。わたしもこれでわか時分じぶんには隨分ずゐぶんいたずらなきつねでして、諸方はう/″\はたけあらしました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
唯海苔の香氣の記憶だけ、しかも鼻の先へ匂つて來るやうに殘つて居ます。そんな風にして私は諸方はう/″\へ連れられて行きました。
「節——お父さんにこしらへて頂いた物を出してお目に掛けな——諸方はう/″\から祝つて頂いた物もお目に掛けたらからう。」
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
前達まへたちはあの繪馬ゑまつてますか。うまをかいたちひさながく諸方はう/″\やしろけてあるのをつてますか。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私は靜かに歩いて行く姉さんやお婆さんの後に隨いて、買物に集る諸方はう/″\の内儀さんだの、市場の灯だの、積み重ねた野菜と野菜の間だのを歩き𢌞るのを樂みにしました。
木曾きそには毎年まいとし馬市うまいちつくらゐに、諸方はう/″\うまひますから、それではいおほいといひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)