説文せつもん)” の例文
支那の旧い書物の『説文せつもん』にはこの草は人の血が化したものだといっているのは面白い。同国でもこの事の根を用いて綘色を染める。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
説文せつもん』に曰くいなずまは陰陽の激曜するなりとはちと曖昧あいまいであるが、要するに陰陽の空中電気が相合する時に発する光である。
歳時記新註 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
序に云ふ。老樗軒はわたくしは「らうちよけん」と訓んでゐたが、今これを筆にするに当つて疑を生じ、手近な字典を見、更に説文せつもんをも出して見た。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
これは専門の説文せつもん学者を煩わすべき問題であるが、何でも今日我々が「ハハソ」と訓む柞の字、「トチ」と訓む栩の字、杼の字、橡の字、「クヌギ」と訓む櫪の字
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
誤りやすき字につきて或人は盡の上部はいつなりじゅんの中は王なりなど『説文せつもん』を引きて論ぜられ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
説文せつもん』で字を引く事などは現代日本の学生の及ばぬところかも知れない。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
説文せつもん』には詠也とあって、言を永くするを一字にあらわせば詠である。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
いわゆる強さの形が変化するというは、かつの字について前の「説文せつもん」にいえるがごとく、重荷をになうて堪えること、すなわち辛苦艱難しんくかんなんに堪える、耐忍たいにんの力あることをもってその強さが計られる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これは中国の書物の『説文せつもん』に従ったものであろう。藟(音ルイ)とはツルすなわちカヅラのことで、それは藤の字の本義である。したがって藤はカヅラである。
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
医書中で『素問そもん』を愛して、身辺を離さなかったこともまた同じである。次は『説文せつもん』である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
梅天の一に「山妻欲助梅菹味、手摘紫蘇歩小園」の句があり、断梅の一に「也有閑中公事急、擬除軒下曝家書」の句がある。説文せつもんに「酢菜也」とある。梅菹ばいそ梅※ばいせいも梅漬である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
海保漁村撰の墓誌に、抽斎が『説文せつもん』を引いて『素問』の陰陽結斜は結糾けつきゅうなりと説いたことが載せてある。また七損八益を説くに、『玉房秘訣ぎょくぼうひけつ』を引いて説いたことが載せてある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
説文せつもん校録にも亦「鄭風秉蕳、字当同葌、左氏昭二十二年大蒐於昌間、公羊作昌姦、此葌与蕳同之証」と云つてある。説文に葌を載せて蕳を載せぬのは許慎きよしんが葌を正字としたためであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)