詐術さじゅつ)” の例文
詐術さじゅつや陰謀や暴力を主な手段とし、組織も性格も独裁的、非大衆的、不寛容的な私党だというのが、一般に認められる区別である。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
詐術さじゅつはかならず露顕するもののようである。さすがの浅田も九文落したのに十一文拾った事に就いて、どうにも弁明の仕様が無かった。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「はははは。そんな程度の詐術さじゅつ小計。なんで奇妙とするに足りましょうや。むしろ大器の者の恥ずるところです。いや、汗顔汗顔」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女の苦肉の詐術さじゅつかゝって生きながら不具にされる夫則重を考え、それらの「美」と「醜」とを表わす二つの顔を並べて空想してみると
かほど信者の心を奪い去る邪教の詐術さじゅつというものを一見したいと思い、元々かの本殿は勝手知ったるわが家ですから、ふと忍びこんでみたのです。
といって、一座を見まわす女の張りのある声にも、眼にも、なんとなし、わざとらしい、詐術さじゅつめいたいろが看取される。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
もっとも何等の自信もなければ嫉妬の起りようもないわけであるが。しかし嫉妬はその対象において自己が嫉妬している当の点を避けて他の点に触れるのがつねである。嫉妬は詐術さじゅつ的である。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
敵に対しては詐術さじゅつも正道と、つい近ごろまで我々も信じていた。そうかと思うと海南の小島においては、潮に漂うて海の外から、そんな大草履が流れてきたといって、畏れ慎んでいた話もあった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
平次はとうとう事件の詐術さじゅつを見破ってしまったのです。
呉の深謀も、ついに魏をあざむけなかった。魏にも活眼の士はある。司馬仲達の言は、まさに完膚かんぷなきまで、呉の詐術さじゅつを暴露したものであった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
擬兵ぎへい、偽陣。これはただ人を惑わす詐術さじゅつに過ぎない。こんなものに昨日からいらざる惑いを抱いていたことの恥かしさよ」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奴らは詐術さじゅつに富み、文明の武器を持ち、相当手ごわいが幾千里を来て、気候や風土にも馴れないため、大半はへたばッている。恐れるには足らない。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼らの詐術さじゅつであることを看破していたが、わざと面をやわらげ、土産の酒壺を開かせて、「きょうは、せっかくの所を、酔い損ねてしまった。大いに酔い直そう」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
では、冥途めいどのみやげに、黄蓋の書簡をもって、予が詐術さじゅつなりと観破した理由をいって聞かせてやろう。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「でも、孔明は智者です。姜維も隅におけない人物です。恐らくは詐術さじゅつでしょう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「みな玄徳の詐術さじゅつというもの。彼ほど巧みな君子はない。そんな者にあざむかれて、万代に悪名を残さんよりは、今もいうた通り、徐庶へ手紙を書いたがよかろう。のう老母、ひと筆書け」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとより詐術さじゅつである。それとは張飛もさとっていたが、彼の性格として
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
する者の資本もとも同じで、悪党の詐術さじゅつというもの。俺という人間は、善根どころか、悪根ばかりこの社会に植え歩いている、魔界の頭領なのだ。またこの先、こんなに乗らねえように、よくつら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「母上もまた彼の詐術さじゅつにかかりましたか、いよいよ以って許せません」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから、あんな詐術さじゅつをやりました。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
詐術さじゅつじゃよ、それはことごとく」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)