視入みい)” の例文
不思議そうに、何もかも不思議そうな、ふらふらの、揺れかえる、揺れかえった後の、また揺れかえりの、おそろしいものに視入みいっている眼だ。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
彼が驚いたのは当然であつた。彼が何心なくぽかんと視入みいつてゐた大空の一角には、実にことさらに星を其形に並べてちりばめたとしか思はれぬ巨大な十字形の一星座が判然と見えるのであつた。
嬉しくなって、私が視入みいった事は申すまでもありますまい。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は立佇たちどまって遠慮もなく美しい花嫁子はなよめごの顔を視入みいった。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
と言って弟は私のやつれた顔にちょっと視入みいったが
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
と頭上にある青空が、さっと透き徹って光を放つ。(この心のうずき、この幻想のくるめき)僕は眼もくらむばかりの美しい世界に視入みいろうとした。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
といいながらその絵をサラリと敷居の上へなげ、飲み残しの冷たい茶をゴクリと一息にのむと今度は眼鏡のたま袖口そでぐちでこすりながらのぞき込むようにじろりじろりと裕佐の顔を視入みいるのだった。
炎天にさらされている墓石に水を打ち、その花を二つに分けて左右の花たてに差すと、墓のおもてが何となく清々すがすがしくなったようで、私はしばらく花と石に視入みいった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
彼が驚いたのは当然であった。彼が何心なくぽかんと視入みいっていた大空の一角には、実にことさらに星をその形に並べてちりばめたとしか思われぬ巨大な十字形の一星座がぼうっと見えるのであった。
しーんとした真昼、彼は暑さにあえぎながら家のうちの涼しそうなところを求めていたが、風呂場の流板の上に小桶こおけに水を満たすと、ものにかれたようにぼんやりと視入みいった。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
女はまた彼の目をじっとほほえんで視入みいりながら追及した。