見惚みとれ)” の例文
旦那様がじっと奥様の横顔を御眺めなさるときは、もう何もかも忘れて御了いなすって、芝居好が贔負ひいき役者に見惚みとれるような目付をなさいます。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ほとゝぎすの繪比羅ゑびらながら、じつ見惚みとれ何某處なにがしどころ御贔屓ごひいきを、うつかりゆびさき一寸ちよつとつゝく。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ことに見ず知らずの者に四十金恵んで下さるとは何たる慈悲深い人だろうと、我を忘れて惚れ/″\と見惚みとれて居りまして、思わず知らず菓子の包みをバタリッと下に落しました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見て疑念ぎねんを散ずべしと彼二品を差示さししめせば大膳は此品々を受取まづ御墨附おすみつきを拜見するにまさしく徳太郎君の御名乘に御書判おかきはんをさへすゑられたり又御短刀おんたんたうを拜見し暫く見惚みとれて有りしが大膳きふに座を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして場所探しがようやく単調になろうとする頃彼等は特に角度の深いうねりを廻って、静かにたたえた池といおうか湖水といおうか、とにかくその風景に思わず見惚みとれざるを得ないような場所へ出た。
又た取出したりして御眺めなさる——それは鏡に映る御自分の御姿に見惚みとれると同じような御様子をなさるのでした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)