見付みつか)” の例文
「先生。大変な騒ぎで御座ります。奥山おくやまねえさんが朝腹あさっぱらお客を引込もうとした処を隠密おんみつ見付みつかりお縄を頂戴ちょうだいいたしたので御座ります。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「何か見付みつかりましたか。」と、お杉は重ねて問うた。その声が四方の低い石壁に響いて、何となく凄愴ものすごいように聞えた。市郎は黙って立っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さて送信をやってみますと、なるほど電波はうまく空中へ飛び出すことが判りましたが、僕の短波長通信に応じて呉れる相手は中々見付みつかりませんでした。
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
十四五けんひだりの方へ濠際ほりぎは目標めあてたら、漸く停留所ていりうじよの柱が見付みつかつた。神さんは其所そこで、神田橋の方へいて乗つた。代助はたつた一人ひとり反対の赤坂ゆきへ這入つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
伊「それ御覧な、仕様がないじゃないか、伯父さんのとこから御飯でも持って来る人に見付みつかっちゃア大変だ、近所の人はみんな起きてるだろう……あゝ弱ったね、本当ほんとに困っちまった」
そして、其麽所から此人はまあ、どうして此処まで来たのだらうと、源助さんの得意気な顔を打瞶うちまもつたのだ。それから源助さんは、東京は男にや職業が一寸見付みつかにくいけれど、女なら幾何いくらでも口がある。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「何か見付みつかりましたか。」と、お杉は冷笑あざわらうような口吻くちぶりで問うたが、市郎は何とも答えなかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
伊「まさか此の降りに伯父さんが見廻りもなさるまいとア思うがね、あんな人ではあるし、今朝来た使いが変だと思やアそう云うだろうから油断はしていられないよ、見付みつかって仕舞ってから幾ら悔しがっても取って返しが付かないから」