衿巻えりまき)” の例文
その男は五十年配で、綿入の布子ぬのこに綿入の半纏はんてんを重ね、あかじみた毛糸の衿巻えりまきを頭からくびへぐるぐる巻きつけていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
銀杏返いちょうがえしに結った頭髪かみでもせず、黒い衿巻えりまきをして、お召の半コートを着ている下の方にお召の前掛けなどをしているのが見えて、不断のままである。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
やがて絵羽の羽織を引っかけ、仏蘭西天鵞絨フランスビロードのコオトに黒のきつね衿巻えりまきを肩に垂れた小夜子とハイヤアのクションに納まったが、庸三は何だか進まないような気がした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一人いちにんは黒の中折帽のつば目深まぶか引下ひきおろし、鼠色ねずみいろの毛糸の衿巻えりまきに半面をつつみ、黒キャリコの紋付の羽織の下に紀州ネルの下穿したばき高々と尻褰しりからげして、黒足袋くろたびに木裏の雪踏せつた
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その男は五十年配で、綿入の布子ぬのこに綿入の半纏はんてんを重ね、あかじみた毛糸の衿巻えりまきを頭からくびへぐるぐる巻きつけていた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
康二郎はあおざめた顔をそむけ、茶の間へいって衿巻えりまきを持って来ると、それを首に巻きながら、黙って土間へおりた。おようは見向きもせずに、燗徳利を取り、手酌で盃に注ぎながら云った。
ひとでなし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)