血糊のり)” の例文
逃げおくれるのを跳び斬りに切ッて放し、なおも疾風! 引ッさげ刀! ピューッと血糊のりをすごきながら追って走ると、そのうしろへ
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ウム、さし当って、血止めはギリギリと巻いておいた。だが、おれの手は血糊のりでヌラヌラしてきたから、貴公、少しの間代ってくれ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのさい武者のひとり木寺相模は「おさかなに」と血糊のりのついた太刀で“つるぎの舞”を舞ったという。何せいすでにお覚悟のていだった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血からめて、落着きをとり戻すと、角三郎は、死骸の弁馬を愍然びんぜんあざむように、っ伏しているその衣服きもののすそで、刀の血糊のりをふきながら呟いた。
御鷹 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに、野槍の穂さきは血糊のりをなめ、足元には、ひとつの死骸が草をつかんでうツしている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
覆布おおいの下には、血にそんだよろい草摺くさずりの片袖と、血糊のりによごれた黒髪とがせられてあった。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御方は笑いながら、微かにぴくぴくしている大円房の側へ寄って、死骸の脇腹に突っ立っていた一本の懐剣を引き抜き、血糊のりを拭ってピタリと自分の帯の鞘へ納めた。そして
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
短い刃物はもの血糊のりを拭いて、ニヤリと意味のない、不気味な笑みをこちらへ向けた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦陣匆忙そうぼうのさいだ。首は武者の母衣ほろで包まれ、血糊のりがにじみ出している。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後ろ向きになった有村は、血糊のりをしごいて、刀をさやに納めた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)