血漿けっしょう)” の例文
それは自分を励ました声と、許褚きょちょは彼のそばを去るや否、馬をとばして、そこへ馳けつけ、叫喚きょうかん一声、血漿けっしょうけむる中へ躍り入った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血漿けっしょうを曳き這いずり
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
「先頃、使いの口上で、満城を血にせんといったのは、さては、寄手の血漿けっしょうをもっていろどることでありしか。いや見事見事。ご苦労ご苦労」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右手の大刀は血ぬられて柄糸もこぶし血漿けっしょうで鮮紅に染まり、左の小剣はまだ切ッ先がすこしあぶらに曇っているだけで、まだ幾人かの人間の骨に耐え得る光をしていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん、投げ落された人間も血漿けっしょうの粉になり、下になった人間も、肉餅にくぺいのように圧しつぶされた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怒潮四千の軍馬に揉み込まれては、文字どおり鎧袖がいしゅう一触いっしょくで、敢然、孤槍をふるって立ち向う兵は、忽ち、泥地でいち血漿けっしょうと化し、多くは四散して、次の防塁にろうとした。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
華陀はきずを切開しにかかった。下に置いた銀盆に血は満ち溢れ、華陀の両手もその刀もすべて血漿けっしょうにまみれた。その上、ひじの骨を鋭利な刃ものでガリガリ削るのであった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二つに割ってみれば、ちょうど人間の脳を解剖かいぼうしてみたと同じに、大脳や小脳や血漿けっしょうや細胞や、微妙な物体の機構がくるんであるのだった。誰がこれを生き物でないといえるだろうか。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中村忠滋ただしげの手引きで先に城中へ入った一千余の将士はとうとう一名も生きて帰って来なかったのである。中に入るやいな、完封殲滅かんぷうせんめつ、文字どおり血漿けっしょう巨墳きょふんをそこに作ってしまったのであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
血漿けっしょうのけむる中に、主従は顔見あわせ、にこと笑った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)