虚心坦懐きょしんたんかい)” の例文
もう一つ、虚心坦懐きょしんたんかいなリストは、自分の先輩や友人達や、後輩の歌曲、管弦楽曲などを編曲して、幾多の珠玉的な傑作をのこしている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「その歯一本さ。歯一本と真正ほんとうに悟れば、虚心坦懐きょしんたんかい光風霽月こうふうせいげつ抜いて貰いながら所得税の申告も書ける。そこまで行かなければ駄目だよ」
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
常臥とこぶしの身の、臥しながら見るかすかな境地である。主観排除せられて、虚心坦懐きょしんたんかいの気分にぽっかり浮き出た「非人情」なのではなかろうか。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「いやいや、策士に策をもって当るなど、下策げさく。白紙になって会うにかぎる。虚心坦懐きょしんたんかい、ただ自分のこの一生懸命だけを云ってみよう」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学問の基礎は常に生きた現実であり、成心なく虚心坦懐きょしんたんかいにその生きた現実と取組むことこそ、学問的態度なのである。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
虚心坦懐きょしんたんかいとは日本でこそ最も高貴な精神とされているが、ここでは最も馬鹿の見本であった。この二つの距離の間にはいったい何があるのであろうか。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
がしかし率直に、虚心坦懐きょしんたんかいに判断してみるとです、そもそもその誇りなるものが怪しいと言わざるを得ない。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
虚心坦懐きょしんたんかい、去るものを追わず、来るものは拒まずという、未練も執着もない無碍むがいな境地が私の心である。
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
本居大人うしのような人には虚心坦懐きょしんたんかいというものがある。その人の前にはなんでも許される。しかし、血気さかんで、単純なものは、あの寛大な先達のように貧しい老人を許しそうもない。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼は忽ち気を取直して、送話管を取ると、虚心坦懐きょしんたんかいに告白した。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「それでは、せっかく孔明が使いして実現した同盟の意義と信義にこちらからそむくことになろう。虚心坦懐きょしんたんかい、ただ信をもって彼の信を信じて行くのみ」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虚心坦懐きょしんたんかいに考えて、君は何う思うかね?」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼はあくまで虚心坦懐きょしんたんかいをむねとしてこれへ帰って来たのである。何の策も持つまい。怒りも現わすまい。ただ主家小寺家のためと、武門の信義をもって一貫しよう。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虚心坦懐きょしんたんかい、自分と彼の人物とを、ふかく思い較べてみれば、明らかに、てまえが劣っておるようでござる。過去現在の小我を一切すてて、即座に快い返辞を与えてやりましょう。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虚心坦懐きょしんたんかいそのものである。——そう聞いてから、大いに飲み出した。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
虚心坦懐きょしんたんかいである。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)