虎穴こけつ)” の例文
われわれは「うがち過ぎ」をこわがらないで「言わずもがな」をけ飛ばして勇敢に創作心理の虎穴こけつに乗り込んでみなければならない。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
よし、突進しよう、敵に気づかれないように、この秘密を探り出して、平林大尉に教えて上げよう、「虎穴こけつに入らずんば虎児こじを得ず」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
この屋敷へ入り込むのは、虎穴こけつへ入ると同じだが、そういう冒険をしなかった日には、虎児をることはむずかしい。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼の頼もしい友人たちとくわだてた大奥侵入の空想も、七兵衛の身を以て虎穴こけつを探って来た報告によれば、どうしてどうして、伊賀流の忍びの秘術を尽したって
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つまりこうして研究の原稿が古田と無電小僧と先生——最後の方ですね——との三人に別れてしまったという訳です。そこで無電小僧は虎穴こけつに飛び込んだのです。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
奈落ならくへ突きのめされた梅雪は、あたかも虎穴こけつをのがれんとして、龍淵りゅうえんにおちたような破滅はめつとはなった。もうこのうえはいちかばちか、いのちはただそれ自分をたのむことにあるのみだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謹厚の人もまた絳衣こうい大冠すと驚かれたる劉郎りゅうろうの大胆、虎穴こけつに入らずんば虎子を得ずと蹶起けっきしたる班将軍が壮志、今やこの正直一図の壮年に顕われ、由々しくも彼を思い立たしめたり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
せっかく虎穴こけつに入って、貴重な虎児こじを取り逃がしてしまったのでは、また捜し出すまでの手数がいると思われましたものでしたから、召し取るまえにその隠匿個所をつき止めておこうと
虎穴こけつ鞍馬くらま竹童ちくどう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)