虎列剌これら)” の例文
同じ死神でも虎列剌これらや、黒死病ぺすとと違ひ、インフルエンザといへば、なんとなく、その手は、細く白く、薄紗を透して幽かな宝石の光りをさへ感ぜしめるではないか。
風邪一束 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
... 見るとぞっとして手も付けられない。中でも虎列剌これらの虫や赤痢せきりの虫は一番イヤだ」腸蔵
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この界隈かいわいの長唄の師匠では、これが一番繁昌して、私の姉も稽古に通った。三宅花圃みやけかほ女史もここの門弟であった。お花さんは十九年頃の虎列剌これらしんでしまって、お路久さんもつづいて死んだ。
思い出草 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なるほど芸妓げいしやのおぢうさんだ、おめえ虎列剌これらで死んだのだ、これはどうも……此方こつちてから虎列剌これらはう薩張さつぱりよいかね、しかし並んで歩くのはいやだ、ぼく地獄ぢごくくのは困るね、極楽ごくらくきたいが
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
或る地方で出来る鳥肉の鑵詰かんづめは多く虎列剌これらかかった鳥を製したので、鳥の虎列剌はその地方の特有病になっています。毎年必ず或る季節に虎列剌で鶏が沢山たおれますからその肉を鑵詰にします。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
赤痢せきりとか虎列剌これらとかその他恐るべき流行病は大概飲用水から起ります。全体なら一度沸騰わかした水のほかは決して飲まないのに限りますけれども戦地ではその事を実行出来ない場合もありましょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)