薬師くすし)” の例文
旧字:藥師
だが不幸にも家治将軍は、その後間もなく逝去せいきょした。田沼主殿頭が薬師くすしをして、毒を盛らせたということであるが、真相は今にわからない。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
わが国における薬師くすしすなわち医者の元祖ということで、それに菩薩号を授けて薬師くすし菩薩と崇めたものと解せられるのである。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
京都みやこで聞えている薬師くすしの店のあるじだと云った。妙心寺のお書付も所持しているし、授翁和尚じゅおうおしょうもよく存じ上げている。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それなら薬師くすしをつかわすから療治をするがよいと云う仰せがあって、間もなく宿へ薬師が参りましたので、起き直って、烏帽子えぼし直垂ひたゝれをつけて対面しましたところが、ちょっと脈を取ってみて
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
薬師くすしも知らじ。
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
各所の小合戦は絶え間ないし、傷者は殖えるばかりだし、それにまた、蔵六が、薬師くすしというので
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ああ、それでお父様は、薬師くすしになられたのでございますね」こう云ったのは松虫であった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
施薬院せやくいんをひらいて、薬師くすしだの上達部かんだちべだのが、薬をほどこしたり、また諸寺院で悪病神を追い退ける祈祷きとうなどをして、民戸の各戸口へ、赤い護符ごふなどをりつけてしまったけれど
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は薬師くすし、間違いはござらぬ。さっきそなたが釜へ入れた薬、眠剤ではなくてまさしく砒石ひせき! そこでこの私の思うには、砒石をそなたへ与えた女、恐らく島津方の間者であろう。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほかに、たくさんな幄舎あくしゃがあり、幕囲まくがこいが見え、そこには、右馬寮、左馬寮の職員やら、雅楽部ががくぶ伶人れいじんやら、また、落馬事故や、急病人のために、典医寮てんいりょう薬師くすしたちまで、出張していた。
「それはお父様が薬師くすしなので、それでそんなことをおっしゃるのでしょう」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この身に、医や薬師くすしはと、先ごろもきついお顔で仰っしゃられた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薬師くすしとしては無責任だな」クックッと笑う声がした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おおよい所でした、六条様、たいへんです。有範様の御容体がにわかにわるうござりまして、医師薬師くすしも、むずかしいという仰せ。奥のおん方様も、宗業様も、お枕べに、付ききりです。すぐ、お越しくださいませ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)