薄寒うすさむ)” の例文
勘太郎の村から十丁ばかりはなれた所に光明寺こうみょうじという寺があった。山を少し登りかけた深い杉森すぎもりの中にあって、真夏まなつの日中でもそこは薄寒うすさむいほど暗くしんとしていた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
倫教ロンドン巴里パリイに比べて北へ寄つて居る所為せゐか、七月になつても薄寒うすさむを覚える様な気候である。巴里パリイの様に上衣うはぎを脱いでコルサアジユだけで歩く女をだ一人も見受けない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
月の夜毎よごとおそくなるにつれての光は段々えて来た。河風かはかぜ湿しめツぽさが次第に強く感じられて来て浴衣ゆかたはだがいやに薄寒うすさむくなつた。月はやがて人の起きてころにはもう昇らなくなつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
今日は土用中ながら薄寒うすさむい日であった。朝は六十二三度しかなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)