とろか)” の例文
頃しも六月の始め、金をとろかす炎暑にたちまち指を落すばかりの寒気起り、積雪尺に余りしを以て、人夫にわびを焼いて雪中の寒気を凌いだ。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
お初どのとやら、そなたは、一時、あの河原者の容色に、迷われたとかいうことだが、女子おなごの身で、あやつのような化性けしょうのものに近づけば、いずれ、魂をとろかされ、生き血を
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
オンファロオド、人をとろか明色めいしよくの眼をした臍形ほぞがたの花、影を無言むごんに映して見せる奧深い鏡。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
祖先の厳正なる性格にのっとらずして、典雅魂を奪い、麗美心をとろかすべきの法を以てし、かくのごとくして、吾人をして、今や衰境におちいれるラテン民族の如くに美しからしむるを可なりとせん。
我が教育の欠陥 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)