蔑視さげす)” の例文
それかのをんなは、最初はじめの夫を失ひてより、千百年餘の間、蔑視さげすまれうとんぜられて、彼の出るにいたるまで招かるゝことあらざりき 六四—六六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
自分を信用させようと骨を折っている、男の狡黠わるごすい態度も蔑視さげすまれたが、この男ばかりを信じているらしい、母親の水臭い心持も腹立しかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼は性来の臆病から、仮令たとえ自分で自分に知れる程度にとどめて置いたとは言え、自然を蔑視さげす軽侮あなどらずにはいられないような放肆ほしいままな想像に一時身を任せた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平民の娘と蔑視さげすまれつづけて、針の蓆にいるような辛い思いをしていたという。
魂の喘ぎ (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
ロミオ こがるゝかひもなく、其人そのひとため蔑視さげすまれて。
われ目をさだめて見しに一旒の旗ありき、飜り流れてそのはやきことすこし停止やすみをも蔑視さげすむに似たり 五二—五四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
お島は耳朶みみたぶまで紅くなった。若い男などをっているみだらな年取った女のずうずうしさを、蔑視さげすまずにはいられなかったが、やっぱりその事が気にかかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
こうお種は言って、土地の風俗を蔑視さげすむような眼付をした。楽しそうな御輿の響は大切な若い子息むすこ放縦ほしいままな世界の方へと誘うように聞える……お種は正太のことを思ってみた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
室を嫌っているとしか考えぬお増のそういって聞かすことばの意味が、お今にはおかしく思えたり、自分から勧めた縁談に、気のいらいらするようなお増が、蔑視さげすまれたりした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一方には左樣いふ女と碌に口も利かないほど彼等を憎み蔑視さげすむやうな心を持つて居ました。
「私来たことあるのよ。わかるでしょう。でも蔑視さげすまないでね。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
一層醜くも蔑視さげすましくも思えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)