蒼天そうてん)” の例文
しかしてわれ今再びこの河畔かはんに立ってその泉流のむせぶをき、その危厳のそびゆるを仰ぎ、その蒼天そうてんの地にれて静かなるをるなり。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
けれども、たとい他の者は皆雨傘あまがさの下にいようとも、恋人らがながめる幸福の蒼天そうてんは、常に空の片すみに残ってるものである。
拱廊きょうろうのあいだから見あげると、青い空がわずかに見え、雲が一片流れていた。そして、寺院の尖塔せんとうが太陽に輝いて蒼天そうてん屹立きつりつしているのが眼にうつった。
その神は不思議な大釜おおがまに五色のにじを焼き出し、シナの天を建て直した。しかしながら、また女媧は蒼天そうてんにある二個の小隙しょうげきを埋めることを忘れたと言われている。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
この茫々ぼうぼうたる大地を、小賢こざかしくも垣をめぐらし棒杭ぼうぐいを立てて某々所有地などとかくし限るのはあたかもかの蒼天そうてん縄張なわばりして、この部分はわれの天、あの部分はかれの天と届け出るような者だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天文に属するもの 蒼天そうてん、空間などに起こること。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
コゼットは蒼天そうてんのうちに、自分と似寄った者を、恋人を、おっとを、天国における男性を、見いだしたのである。
胡桃くるみうちひそんで、われを尽大千世界じんだいせんせかいの王とも思わんとはハムレットの述懐と記憶する。粟粒芥顆ぞくりゅうかいかのうちに蒼天そうてんもある、大地もある。一世いっせい師に問うて云う、分子ぶんしはしでつまめるものですかと。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)